新鮮な卵
数日前、「天上大風」と言う1冊が手に入りました。これを読むと無償に日本へ行きたくなるような雑誌なのですが、その中に面白い記事があり、私を嬉しくしてくれました。それは、「昔ながらの朝ご飯」と言う特集の中の記事なのですが、塩田丸男さんと塩田ミチルさんが書かれていた「行列ができる卵屋」のお話です。
「青梅の地卵」と言う会社が、軽トラに卵を積んで住宅地に売りに来るのですが、やってくる予定の30分も前から主婦達が待っているのだそうです。安売りではなくて、普通の市販卵の3倍近い値段で売られているのですが、この卵、とても新鮮なのが買われている理由なのです。
天然素材を自家配合した飼料を食べ、クラシック音楽をBGMにのびのび育った若鶏が産む卵だとか。
その新鮮さに、さっそく塩田丸男さんと塩田ミチルさんもこの卵を特注で取り寄せるようにされたようですが、その続きに書かれている記事の中に「思い出の卵ご飯」があり、これがわたしに快いショックを与えたのです。
最初、「卵ご飯」と書いているのを見てもなんのことだか分かりませんでした。読んでいくと、「弟と半分わけなので、ある時は白身ばかりがずるずるとかかってしまったり、・・」とあり、ああー、あの卵ご飯かー、と納得したのです。卵をほぐした中に少しだけお醤油をたらして、熱いご飯にかけるだけのアレです。もう何十年食べていないでしょうか。最後に食べたのはいつだったかしら思い出せないくらい昔の事です。
あの卵ご飯のことが出ていたのです。そして写真も。
一気に懐かしさと、食べてみたいーと言う気持ちがむくむくと湧いてきました。
実は私のところも2ヶ月ほど前から大家さんちと一緒に若鶏を飼い出したのです。卵を産む鶏です。
鶏は最初6羽だったのですが、最初はなかなか卵を生まなくて、大家さんちのご主人が「家の鶏は卵を生まないからバカだ!」と友達に言いまわり、周りは、「まだ若いからもう少し待たないと・・」と慰めるのですが、彼はどうも納得行かない様で、とうとう友達が卵を既に生んでいる鶏を2羽プレゼントしてくれました。それから少しして、他の鶏達も卵を生み始め、今では毎日1羽1個の割合で産んでくれます。でもそれが今度は問題で、私達と大家さんちだけでは食べきれないのです。1日に8個の卵が手に入るので、友達に10個づつ持って言ったり、大家の従弟の人にあげたり、それでもどんどん溜まるのですね。
私達の鶏もクラシック音楽こそ聞かせていませんが、天然素材の飼料を食べさせ、日中はオリーブの木の間に放してあげています。フルーツの皮なども食べさせているし、卵の品質はそれは最高だと思います。
そう、この雑誌の記事にあるような新鮮な卵が私にはいつでも手に入るのです。記事を読んでいて、そんなに新鮮な卵が手に入るのはラッキーな事なのだと改めて気がつきました。そして早速食べてみたくなったのが卵ご飯です。
主人に「今日は卵ご飯にするから新鮮な卵を持ってきて!」
と頼むと、卵の上に座っていた鶏をどかして持ってきたよ、とぬくぬくの卵を手渡してくれました。
勿論、私が1個、彼が1個、ご飯の上にかけました。
おかずは味付け海苔だけ。
びっくりしたのはフランス人の主人が卵ご飯を美味しいね、と言いながら食べたことです。
「本当に美味しい?」
と訊いてみたのですが、
「うん、美味しい!」
と彼はせっせと食べています。私は嬉しくなって、
「うん、美味しいよね、やっぱり新鮮な卵は違うねー」
となんだか子供の時に帰ったような気分で黄色い卵ご飯を食べました。
こちら田舎のほうでは、土地を持っている人達は可能な限り自給自足の生活を試み、動物では鶏、ウサギ、豚、鴨、食用の鳩、等が飼われ、野菜はジャガイモからオニオン、ありとあらゆる物が植えられます。
大家さんちのおばあちゃんも土地に何も植えないで遊ばせておくのはもったいないと思うようで、時期になるといろんな種類の苗を抱えてやってきます。
植えると言う行動自体が好きなようで、植えてしまうと町にある自分の家に帰っていくので、水やりは私達の仕事になるのですが、でも収穫の新鮮な野菜の殆どは私達が頂くので、結局皆がハッピーとなるのです。