ピサの斜塔
日記に嫌となるほど書いたあのイタリアの猛暑。
やっと終わりました。
今は、朝夕は涼しく、日中は底ぬけに明るい青空が広がり、それはそれは気持ちのいい日が続いています。
と日記に書ける今、ああー、なんと気持ちのいいこと。
今、各地で葡萄の収穫が始まっています。
キヤンテイ、サン・ジミニヤーノ、モンテプルチアーノ、私の家の前・・・。
モンタルチーノは8月の末に既に始まっていたとか。
あの猛暑で葡萄の糖値が速く上がり、収穫も早くなったようです。
ただ、雨が殆ど降らなかったため、葡萄の粒は小粒で、殆ど干し葡萄状態のものもあり、量はそれほど取れないようです。
しかし、糖値のかなり上がった葡萄から出きる今年のワインは例年にないほど良質かも、と回りから期待の声が聞かれます。
遠くには、糸杉が一段濃い色でぴーんと立ち並び、その下に綺麗に線を引いたように並ぶ葡萄畑、横には綿帽子のように丸くなったオリーブの木が、これも綺麗に並び、まさにトスカーナの絵葉書のようにはっきりと見えます。
夏は暑さの為白く濁って見える風景も、秋から冬になると空気が透き通っている為か、素晴らしい景色が眺められるのです。
さて、今回始めてトライした事があります。
実はピサの斜塔に登ってきました。
奇蹟の広場に入ると、先ずびっくりさせられるのがこの斜塔。
本当に傾いています。これで良く倒れないものだと見るたびに感心してしまいます。
着工から完成まで約200年かかって出来た塔。
作り始めたころから既に傾き始め、上層部3階まで作った時に工事が中止になります。
傾いたままの塔に再建築が始まったのは殆ど100年後。
それも7階まで作った時に又中止になっています。
トップにある、土地とほぼ水平にある8階部分は、更に80年後になって作られ、それから10年後に完成したそうです。
そんな塔でしたが、人々の人気の的となり、600年もの間、沢山の人達が登ったのです。
しかし、その傾斜のしかたがとうとう限界となり、13年ほど前に大規模な工事が始まりました。
そして再度登れるようになったのが去年の12月なのです。
大丈夫、塔はまだちゃんと傾斜しています。
30人づつ登るように制限されている為、春から秋まで旅行者が多い時期は予約を入れないとほとんど登れません。
予約はピサのサイトで出来ます。www.opapisa.it
先ず登る10分前にオフィイスに行き、カメラ以外の荷物を全て預けます。
その後、ユニフォームを着た案内係に誘導されて塔に登ります。
全て大理石で出来ている塔ですから、勿論階段も大理石なのですが、その固い石が長年にわたり人々に踏まれて、真中がかなり磨り減っています。
そんな階段を登っていくと、ほとんど直ぐになんだか自分が酔っているような感じになってきました。
感じだけではなく、なんと体が左によろけるのです。
ええ~~、と思いながら登るのですが、自分の体が自分でもどうしようもなくよろけてしまってコントロールできません。
なんだかびっくり箱に入ったような、足が浮くような、並行感覚がなくなったような、奇妙な感じです。
私だけかと思っていると、前を歩いている人が、
「体は正直だよなー」と言っているのが聞こえました。
そうなんです。体は真っ直ぐだったのですが、塔自体が傾いている為、塔の壁が体に押し寄せてきていて、それに慣れていない頭と体が、その状態に抵抗していたのです。
なんだかめまいを感じながら登っていくと、今度は反対方向に体が傾きます。
あー、今は塔のこっち側を歩いているのだな、と今度はちゃんと理解できました。
そんな階段、約250段をぐるぐるとらせん状に上ります。
思ったよりも早く上に到着し、外に出ました。それから更に細い階段を上り7階の踊り場まで出ます。
出た途端、うわー、という感じ。
そこからの眺めは素晴らしい。
直ぐ目の前にあるデゥオモがバシリカスタイル(上から見ると十字架に見える)とは知っていましたが、こうやって実際に上から見るのは始めてで、本当に十字架になっていることを確認。
遠くには海が見えるとのことでしたが、この日は白くかすんで見えませんでした。でも、下に奇跡の広場を歩き回る小さくなった旅行者たちが見え、更にピサの街並みも見えて、しばらくはボーっとしていました。
そして思い出したように、写真を撮り始めました。
登って降りるまで35分間あります。250階段を登るなんて直ぐですから、上にいる時間がかなりあり、先ずは写真撮りに忙しくした後は、皆静かにボーっと遠くを眺めていました。
ユニフォームを着た案内係が3人も一緒にいて、なんだか暇そうにこれもまたボーっとしていました。
1度は登ってみたいな、と思っていた塔ですが、やっと目的を果しました。
これで私が登った塔は、シエナのマンジャの塔、サン・ジミニヤーノのグロッサの塔、そしてピサの斜塔。同じ場所にある洗礼堂にも登りました。
登っていないのはフィレンツェにある、クーポラです。まあ、これもそのうちに・・・。