洗礼式
5月28日の土曜日、私の町の教会で大家さんの孫であるエミリーの洗礼式がありましたので、その時の模様をご紹介します。
27日でちょうど4ヶ月になったエミリーです。
身長も伸び、体重が6kgを越してまるまると健康に育ち、今は「あー、うー、」と独り言を言うようになりました。
洗礼式とは、クリスチャンになるためのセレモニーですから、どんなことをやるのか興味があるではないですか。
私はまだ生で見たことがありませんでしたので、カメラウーマンを引き受けながら一度見てこようと行ってきました。
エミリーと更に女の子一人と男の子一人の合計3人の洗礼式が、いつもある土曜日の夕方6時からのミサに組み込まれて行われました。
ミサに参加する信者達の他に、この日は洗礼を受ける赤ちゃんの親戚、友人達も集まり、教会の前はかなり混雑していました。
私もエミリーの家族達と一緒に教会に入り込みました。
えっ、なんですか、今日は結婚式があるのですか、と言いたくなるほど教会の中はおしゃれをした人ばかりです。
男性も負けずにおしゃれなのですが、やはり女性はその上を行っており、パーティーに行くような格好をした若い女性も沢山いました。
エミリーのママ・ロベルタも、そしてまだ若いロベルタのお母さんダニエラ、そしてロベルタの妹デヴォラも洗礼式の1ヶ月ほど前から洋服、靴、バッグ一式を買い揃え、私に披露してくれました。
滅多にこういう派手な場所には出てこない、大家のお母さん・エリーナおばあちゃんもこの日は大変なおしゃれで参加でした。
黒字に金色の模様の入ったワンピースとおそろいのベスト。
それにエリーナおばあちゃんのお母さんが結婚したときに買ったという(かなりアンティック)黒いビーズのような2重のロングネックレスにおそろいの黒のプチバッグ。
指にはルビーが5個並んでいて更にその両側にダイヤが並んでいる素敵な指輪。
「私、初めて見るよ、この指輪」と言うと、「だって、殆どしないもの」とおばあちゃん。
教会の中はミサが始まる前で、洗礼を受けるそれぞれの赤ちゃん達の若いカップルが緊張気味で親戚や友達から祝福のキスを受けており、これから始まるセレモニーの興奮が高まっていました。
さあ、いよいよ6時。
先ず、神父が両親達の前にやってきて、「晴れ晴れとした、そしてプライドのある顔の両親に幸いあれ」とか何とか言って、祭壇の前まで誘導していきます。
洗礼式には、両親の他に介添人としてマドリーナ(女性)とパドリーノ(男性)の出席が必要です。
これは、もし赤ちゃんの両親に何か起こり、赤ちゃんが一人残ってしまった場合に、マドリーナとパドリーノが一生親代わりになって面倒を見る、という為なのです。
普通は洗礼を受ける赤ちゃんの両親の兄弟がなるようです。
エミリーのマドリーナはママ・ロベルタの妹がなり、パドリーノはパパ・ジョバンニの弟が引き受けることになりました。
ロベルタの妹デヴォラはまだ18歳で、今年大学に行く予定なのですが、実をいうと彼女は洗礼式には反対だったのです。
彼女は「洗礼を受けると言うことはクリスチャンになることであり、まだ何も分からない赤ちゃんを親の勝手でクリスチャンにしてしまっていいのか」と言うのです。
「洗礼を受けるかどうかは子供が大きくなって自分で判断するべきではないか」とも言います。
私とジョンクロードもデヴォラに賛成で、エミリーのママ・ロベルタにどうして今洗礼を受けさせるのか聞いてみたのですが、なんと彼女自身もよく分からないというのです。
深い意味はないが、ただ回りがみんなするから私もするだけ、と言います。
洗礼を受けさせておかないと(クリスチャンにしておかないと)結婚するときに教会で結婚をさせてくれないから、なんて余り意味のないいいわけをします。
結婚するときに一番大事なのは市役所に行き、そこに婚姻届を出すことですから、別に教会で結婚式を挙げなくても結婚は立派に成立しているわけです。
でも、教会で結婚式を挙げないと町の人からどんな風に見られるか分からない、と彼女は言うのです。
そう言う彼女自身は結婚しないでエミリーをもうけ、今彼氏と一緒に住んでいるのですから、矛盾した話しですが。
自分の子供をクリスチャンにして、いつまでも幸せを承れますように、と言うのではなく、人の目を気にして洗礼を受けさせる。
勿論こういう意味での洗礼式は、 若い人には反感を買います。
でも、何百年、いえ何千年も前からこうして習慣として行われてきたものですから、これからも続くことでしょう。
普段は教会に行かないデヴォラも愛しい姪のエミリーの為、マドリーナを引き受けたのです。
さて、洗礼式はいつものミサに組み込まれていましたから、 勿論 神父はミサをメインに執り行い、最後に行われる肝心の洗礼式までかなり長い間座っていなければいけません。
最初はおとなしくしていたエミリーですが、その内、暑いし、お腹も空いたのでしょう、泣き始めました。
別の2人の赤ちゃんはぐっすり眠りこけていて、ぴくりともしないのですが、エミリーはだんだんとぐずり初め、ママがご機嫌をとってもパパが抱き上げても泣きやみません。
余り泣きやまないので、一番前の真ん中に座っていたママのロベルタがもうしわけなく思い、エミリーを抱えて私が座っている端の方へやってきました。
端の方が涼しいのか、それとも環境が違うのか、そこではエミリーはおとなしくなるのです。
それで又ロベルタはエミリーを抱えて祭壇の前にもどりましたが、そうすると又エミリーは泣き始めます。
今度はパパが抱えて端の方へやってきました。するとやはりそこでは泣きやみます。
「ふ~~~む、エミリーは洗礼式が嫌いかな?」と私が言うと、パパも「そうなんだ、祭壇の前は余り環境良くないね」だって・・。
途中でミルクを教会の中に運んで飲ませたりして、エミリーはやっと洗礼を受けるときには泣きやんでくれました。
洗礼を受ける証の水を額にかけられるときに泣くかな、と思っていましたが、3人とも泣かず、洗礼式はわずか10分ほどで無事執り行われました。
赤ちゃんに洗礼を済ますと神父は赤ちゃんを高く抱え上げて、「無事洗礼を済ませた子供だ!」と神に伝え、参加者はそれに拍手をするのですが、それ見て 軽い衝撃を受けた私は「なんだかなぁ、クリスチャンという刻印を押されてしまったようだなあ」と 思ってしまったのです。
1時間ほどで、長かったミサと洗礼式が終わりました。
再び、みんなそれぞれの両親に祝福のキスの挨拶に押しかけ、教会の中はわいわいと喜びで溢れかえりました。
これが終わると今度はパーティーが始まるのです。
ロベルタと彼氏は町の中の公共施設件バールでパーティーを披露することにしました。
集まったのは約60人超でしょうか。
屋内とテラスに白とピンクのテーブルクロスのかかったテーブルがセットされ、ビュッフェスタイルでしたが、いろんなサンドイッチや生ハム、ピッツア、ワイン、そして最後には沢山のケーキが振る舞われました。
ロベルタと彼氏の友達も沢山来ていましたが、なんと言っても親戚中が集まりましたので、久しぶりの再会で食事会の盛り上がること。
主役のエミリーはいろんな人の腕の中に抱き回されてかなりストレス気味となり、途中退場となりました。
お開きになったのは最後のケーキも食べてコーヒーを飲んだ10時半頃でした。参加者は帰る前にボンボリエーラというアーモンドを砂糖でくるんだ小さなお菓子をこの日の記念品として持ち帰ります。
小さなお菓子ですが、女の子の場合これをピンクのネットでくるみ、それをピンクのリボンで可愛い動物にくっつけたもので、この日の為に私も手伝って約80個用意しました。
このお菓子は結婚式の時にも配るようで、ボンボリエーラで埋め尽くされたピンクのリボンに飾られた大きなバスケットは幸せの象徴のようです。
11時過ぎに家に帰りついたときにはさすが大家の家族と私たちはぐったりしてしまいましたが、 先ずは誕生最初のお祝い事が無事終わり、みんなでほっとしたのでした。
沢山の人に祝福されたエミリーは本当に幸せな女の子です。