山の上の歯医者さん
先日、歯医者へ行ってきました。
私の行きつけの歯科医は、山のてっぺんにあります。我が家からは車で40分ほどのところで、民家が見当たらない、畑しか広がっていないトスカーナ郊外をひたすら走っていきます。
30分ほど走ったところで歯科医のある山の麓にたどり着き、そこから細い道をくねくねと登ります。
登っても、登っても同じような風景が続き、一体いつになったら頂上なんだろうと心配になったところで、やっと山のてっぺんに到着です。
よくこんなところに医院を建てたものだと感心してしまいます。
村の名前は「La Sassa・ラ・サッサ」。
約300人が住む、眺めはいいものの、いつ行っても人影がない静かで小さな村です。
そんな静かな村に歯科医院を開いたのは、私たちの知人でもあるオランダ人とドイツ人の夫婦でした。
ドイツ人の奥さんが歯医者さんで、トスカーナに来るまではドイツで歯科医院を経営していましたが、気候の良い、食べ物やワインが美味しいスカーナが彼等も大好きで、出来ることならトスカーナで歯科医院を経営したいと約15年前にやってきました。
多分、どこかの不動産屋に紹介されたのでしょう、ラ・サッサの小さな村の更に裏側にある土地が気に入り、そこに家を建て、更に、村の中心地に歯科医院を開業しました。
開業するとなった時、彼等の家族や知人は、そんな小さな村に客が来るはずがない、歯科医院はうまく行かない、と反対したらしいのですが、なんと、ラ・サッサ近郊に移り住んだドイツ人やオランダ人、イギリス人等の外国人達に人気が出て、一気に超忙しい歯科医になってしまいました。
イタリア人の歯医者はあまり信頼出来ない、ここだったらドイツ語や英語でも話せるし、設備も北ヨーロッパ並みで安心出来る、と外国人達は信頼したようです。
信頼された通り、歯科医の夫婦はドイツで使っていた時と同じ歯科器具を運び入れ、毎年、最新の治療システムを取り入れていました。
ただ、その為に、治療費も北ヨーロッパ並みの高額でした。
町や村にある診療所の歯医者を利用すると、ほとんどが無料、もしくは千円ほどの支払いで済みますから、地元の人たちはそちらの方を好んで利用しますが、診療所で何時間も自分の番を待ち、何回も通い続けるのは嫌だ、少々高額を支払っても予約制で時間を有効に使える個人歯科医の方がいい、と考えるのが外国人たち。
もちろん、技術の点でも個人歯科医の方が遥かに上です。
私とジョン・クロードも、知人ということもありますが、上と同じ理由で彼女の医院へ通うようになりました。
思いもかけずに忙しくなった歯科医の彼女は、トスカーナではドイツと同じように詰めて働きたくないという希望で、彼女の歯科医院は週に3日間だけ営業するようになりました。だからいつも予約客でいっぱい。
そんな彼等も今60歳半ばを過ぎ、歯医者の彼女はそろそろリタイアーしたいと、1年前に歯科医院を売り渡すことになりました。
受け継いだのは、私と同じ町に住む若い女性の歯医者さん。
彼女は、ラ・サッサの医院で週に3日間だけ仕事をし、別の日は、別の街の歯科医院に勤めています。働き者です。
そして、数日前、私は初めて彼女の治療を受けました。
若い彼女ですが、治療前はしっかりと説明してくれるし、痛くないし(笑)、信頼出来る先生のようで、安心しました。
きっと、以前通っていた外国人顧客も彼女を信頼して通ってくることでしょう。
歯科医院はあまり頻繁に行くところではありませんが、信頼出来る歯医者さんがいるというだけで、なんだか安心です。
もうすぐクリスマス。良い休暇をお過ごしください。アウグーリ!
矢印の下が、歯科医院のある村ラ・サッサ
クネクネ道を登ってきたところで見える村の全貌。
信じられないかもしれませんが、これが歯科医院の入り口です。岩の上に建物が建っている感じ。
玄関を入ると、歯科医であるリンダの免許証や証明証が各種いっぱい掲げられています。
玄関に入ったところが待合室になります。クリスマス時期なので電飾が飾られています。黒い大きな機械はコーヒー機器。誰でもセルフサービスで飲むことができますが、誰が飲むのかな?
この階段を上ったところが治療室。どこにいても音楽が聞こえてきます。
治療室で、ブルーの上着が歯科医のリンダ、白い上着は助手のジャダ。
支払いを済ませ、帰ろうとしたら、リンダがクリスマスプレゼントにパネトーネのミニ版を渡してくれて「アウグーリ!」と言ってくれました。