引越し
2週間前、やっとわが家と呼べる新しい家に引っ越してきました。
家はポマランチェと言う小さな町から約1km離れた郊外にあり、オリーブとワインの畑が周りを囲んでいます。
一般道路がないため日中でもとても静かで、家の周りは緑一色。
家の裏側には小さな谷が広がっており、その向こう側の深い緑の中に、真っ赤なポピーの花が咲き乱れています。
更に、今この谷では、夜になるとものすごい数の蛍が「光の祭典」を繰り広げているのです。
クリスマスツリーに飾る電気のように、ちかちかちかちかとそれは沢山の輝きが谷を埋めつくしています
。
こんなに沢山の蛍を一度に見たのは初めてで、その美しさに驚きました。
この家はレストランのオーナーのもので、2階には大家の両親が住んでいましたが、数年前に父親が亡くなり、母親は今階下でオーナー一家と一緒に住んでいます。
空になった2階は長女が使うようにと考えていたらしいのですが、彼女は結婚したら一緒には住みたくないと言ったそうで、私達にお鉢が回ってきた次第です。
オーナーの母親(エリーナおばあちゃん)はとっても話し好きで、庭などで会うと話かけてきて、なかなか離してもらえません。
でも時には昔の良い知恵などを教えていただく事もあり、助かります。
さて、ここ郊外に住んでみて始めて知ったのは「お店の出張」があることです。
週に3回、それぞれ別なものを積んだ3台の小さなトラックがやってきます。
今でこそ、全家庭に1台から2台は車がある時代ですが、昔は全員が持っていたわけではなく、こういう郊外に住んでいる人に、特にお年寄りには、町まで買い物に行く事はかなり大変な事でした。
そこでやってくるようになったのが「お店の出張」です。
野菜や果物、チーズ、サラミなどの食品を積んでくる車、洗剤やトイレットペーパなどの家庭用品を積んでくる車、そして冷凍食品を積んでくる車の3台が交代にやってきます。
エリーナおばあちゃんはいつでも何かしら、この3台の車から買っています。
彼女はお店の人とはもう名前で呼び合う中で、なんでも13年の付き合いだそうですから、何かしら買って上げないと申し訳ないように思うようです。
とにかく、この車が来てくれるお陰で、ご近所さん達も助かっているようです。
郊外に来たおかげで、私達も小さな菜園を持つことが出来ました。
大家の家族がわざわざ私達の為に地面を準備してくれていました。
今年は雨が多かったため少し遅れましたが、それでもトマト、茄子、ズッキーニ、キューリ、ルッコラサラダ、サラダ、バシリコなどを植えてみました。
苗から植えたため、トマトはもう花をつけて、小さな実まで出来ています。
バシリコはとても強そうに育ってきました。
もらって来て植えたイチゴの苗も元気に育ち、もう小さな赤い実が出来ています。
もうじきすると、新鮮なトマトや茄子が食べられます。ああ、夏が待ちどうしい・・。
都会などでは鉢植えで育っているハーブたちもここではしっかりと地に根をおろして育っています。
ローズマリン、オレガノ、サルベイ、パセリ等々。
庭のあちらこちらに植えられており、料理に使う時は庭に降りて行き、ちょんっ、と切って使います。
こんなに新鮮なハーブを使えるなんて、幸せ。
それから、もう一つ発見したのは、夜深くなるとナイチンゲールが鳴くことです。
私はナイチンゲールの声を始めて聴きました。
毎夜11時から12時ころになると鳴き始めます。
それは軽やかな声で、素晴らしいメロディーを奏でますので、二人してつい聞き入ってしまいます。
でも、他の鳥たちが深く眠るとき、どうしてこの鳥は鳴き始めるのでしょう。