Kiyomi D.

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パリオ

「パリオ」と言えば皆様はきっとシエナの「パリオ」を頭に浮かべられる事でしょう。

palio di pomarance, toscana

17地区(17のコントラーダ)あるうちの10地区が毎年交代でパリオに参加し、中世の格好をして行進、旗投げの競技などをした後、はだか馬に乗って「パッリウム・絹で出来た旗」を目指して競い合います。走る10頭の馬はその地区に属さず、パリオが始まる直前にくじ引きで割り当てられますので、そのときの熱気と言ったらものすごいものです。そうして勝った地区が「パッリウム」を受け取り、その後1ヶ月もの間、優勝地区として誇りながら町を練り歩きます。パリオはシエナの人々にとってかなり真剣なもので、パリオの始まる数ヶ月前から人々はそれに没頭してしまい、それを批判する人はその後数ヶ月は口をきいてもらえないとか。

palio di pomarance, toscana

パリオは7月と8月に2回あります。 

さて、私がこれからお話しようとしている『パリオ』は馬の競争ではなく、演劇で競争するものです。

私の住んでいる町ポマランチェでは毎年9月に演劇で「パッリウム」を競い合います。この町には4つのコントラーダ(4地区)があり、それぞれがアイデアを練って最高の出来の劇にしようと頑張ります。特に若い人達が多く参加しますので、それこそ町中がこのパリオのお祭りに浮かされて、始まる夕方5時ごろからピアッツア(町の広場)はもう沢山の見物人で埋まっていました。

先ずは市長の話しで始まり、その後4つのコントラーダの行進が始まりました。それぞれが色とりどりの中世の服装に見を包み、太鼓をたたきながら行進していきます。3・4回町を回った後、既に舞台の用意が出来ている大きな広場へと集まってきます。私達も見物席のチケットを買い、観劇です。

お天気はあまり良くなく、少し肌寒かったほどですが、それでも4地区とも一生懸命に、そしてとてもうまく演じていました。最初の地区はホロコ−ストについて、次は女性の虐待について、舞台装置もアイデアいっぱいで、演じている人がつけているマイクも近代的なもので、演技も大した物です、が、なぜだか暗いテーマばかり…。と思っていたら、3番目の地区が「予想できない事のすばらしさ」と言うテーマで、未来は図り知ることは出来ないが、それのすばらしさに気づき、楽しく世界中の人達と仲良くなろう、と言うような内容で、音楽は体が自然に動くほどリズムがあり、舞台のセットも簡単だけど、すばらしいアイデアで大きな効果を出し、私と主人は絶対これが優勝と決めてしまったほどです。最後の地区のテーマはドラッグについてで、これまた暗く、何でこんなに若い人達がこの様な暗いテーマを選ぶのかしらと不思議になったほどです。更に多くの人達は最初の地区が優勝するだろうなどと予想を立て始め、私達を更に?マークへ押しやります。

palio di pomarance, toscana

発表は9時からと言う事で、下のおばあちゃんに夕食へ招待されていたので、それまではおばあちゃんの所へいることにしました。

さあ、いよいよ9時です。あの広場にはもう町中の人達で一杯です。皆発表を待っているのです。ところが市長が来ません。10分待っても、15分待っても、20分待っても来ません。私はいいかげん落ち着かなくなってきていましたが、町の人達は別に文句を言う事もなく、それぞれお喋りに熱中しています。

私は口の中で、「こんな市長は辞めさせろ!」なんて怒っていましたが、やっと30分過ぎた所で彼がやってきました。謝るでもなく「では第31回目の優勝者の発表でーす!」。

広場は急にシーンとしてしまいました。そして発表されたのが、私達が好きだった3番目の地区の「予想できない事のすばらしさ」の優勝でした。「わアーい!」と私達も第3地区の人達と一緒に大喜び。早速彼らは用意されていた「パッリウム」に飛びついて、それを支えながら町へ繰り出していきました。良かった、楽しいテーマが選ばれて、とほっとした私でした。

palio di pomarance, toscana