オリーブオイル
私達の住んでいる地域は土地の酸性がとても低い為良質のオリーブオイルができることで有名です。私達の近所に住んでいるスイス人の友達も約150本のオリーブの木を持っており、毎年自分達用のオリーブオイルを作っているのですが、今年はちょうどそのオイルを作っているところを見せてもらえる事になり、ある夕方見学に行っってきました。オイルを作るといっても自分の家で作るのではなく、町に必ず一件はある製油所(フラントイオ)に持っていってそこで作ってもらいます。
友達が取ったフラントイオでの予約は夕方6時でしたが、丁度良いお天気になったこともあり、沢山の人達がオリーブを持ってきていて、友達の番になったのは遅れに遅れた夕方8時過ぎでした。
私は友達よりも少し後にフラントイオに入っていったのですが、1歩足を踏み入れると、オイルを作る機械から出る湯気なのでしょうか、うっすらと煙っています。そしてあのオリーブオイルの匂いがそこら中に漂っているのです。何だか興奮してしまいます。自分達のオリーブの実を丁度機械に入れた人や、もう既に自分達のオイルが出てきている人達が数人居り、中は思ったよりも静かです。ただ、オイルを作る機械はかなり大きな音をさせて活動しています。中にいるおじさん達と一言挨拶を交わして、私は早速キャメラを片手にその中を見学です。
ではオリーブオイルを作るプロセスを次に書いて見ましょう。
先ず手で摘んだオリーブの実を籠に入れそれを大きなはかりに乗せて重さを計ります。その重さによってフラントイオの使用料を払う事になります。友達は約400kgのオリーブの収穫がありました。今年は春に霜が降りた事があり、例年に比べるとあまり収穫は良くなかったようですが、でもその霜のおかげでまったく収穫のなかった人達もおり、友達はまだラッキーだったと言えます。
そのオリーブの実を床に設けられた穴のような所に放り込みます。ここから少しづつベルトコンベアーで機械の中にオリーブの実が運ばれるのです。
機械に入ったオリーブの実は先ずきれいに洗われます。
次に乾燥機に入り乾燥されますが、その時大きな掃除機のようなものが実と一緒に入っていたオリーブの葉を吸い込み建物の外に放り出します。放り出された葉はチャンと大きな袋に入るようになっています。
それからいよいよオリーブの実は砕かれる機械へと移っていきます。
砕かれたら、次は実も種も全部一緒に圧搾する機械へと移ります。ここでオリーブの実がオイルと水に分かれるマジックが起こるのですね。圧搾する機械の出口が二つあり、一方からは水(野菜の水と呼ぶ)が出て、もう一方からオイルが出てくるのです。
丁度友達のオイルが出てくる瞬間になり、ご主人は味見の為のコッブを片手に構えています。
さあ、いよいよ出てきました。自分達のオイルが出てくる瞬間です。待ちくたびれていた友達の顔がさっと明るくなりました。
出てくるオイルは濁っていますが、黄緑色しており、なんとも感激する一瞬です。早速コップに入れて味見です。友達はパンを用意しており、それをつけて味見します。本当はパンにガーリックを塗って塩をパラリと振って食べると最高のようですが、パンだけでももう嬉しい。先ず出てきたばかりのオイルはとてもさらりとしており、先日別の所で味見したあの取立てのオイルの苦味が殆どありません。もうオイルと言うよりジュースのよう。勿論こってりしたオリーブオイルの味はしますが、舌触りがかなりさらりとしているのです。
友達が言うには苦味は緑色のオリーブの実に一番あるとか。そして美味しいオリーブオイルは一品種だけで作られるものより、いろんな品種を混ぜて作ったもののほうが美味しいのだそうです。
緑色のオリーブの実 (フラントイオ)
黒色のオリーブの実 (レチーノ)
混ざった色の実 (ペンダイオーロ)
点々の模様の実 (モライオーロ)
しかし、最後の方で出てきたオイルには確かにあの苦味がありました。最初と最後でこんなに味が変わるのにはびっくり。とにかく味の方は口の中にオリーブの匂いがフワーッと広がり、苦味がじわーっと下の両側で感じられて、それはそれは美味しい。もうこれは一種のスパイスですね。ただのオイルではありません。これを野菜や新鮮な魚料理につけるだけで何のスパイスもいらないほどです。
この取立てのオイルは数ヶ月容器に入れたまま、濁りが沈殿するまで待ってから使用するようです。勿論取立てを食べても良いのですが、取立てのオイルは腸の中をきれいにする作用があり、あまり沢山食べると後がちょっと大変とか…。
そうそう、最後の圧搾のプロセスで水とオイルを絞り出した後のカスが建て物の外に出てくるのですが、普通これは豚の餌として使われるそうですが、驚いたのは時々南イタリアに運ばれてそこで又オイルを絞り出す為に使われるとか。勿論オイルの質はづーっと落ちるようですが…。