Kiyomi D.

ホーム     トスカーナ日記     プロファイル


シエナのパリオ

palio Siena

前回2回にわたり、暑い暑いと書いて来ましたが、やっとあの140年ぶりの暑さも過ぎ去り、今はいい気候になっています。
夜は涼しすぎるくらいになり、又薄い羽布団をかけて寝たりしています。なんとあの暑い時に比べると約10度程温度が下がったのですよ。
今日も朝のうちは曇っており、お昼頃の温度は24度。先週の暑い時はお昼で38度以上にはなっていました。今夕方の5時半でやっと25度になったところです。太陽が一杯ですが、風があり、なんとも気持ちの良い午後です。

palio Siena

でも、昨日行ったシエナはかなり暑かったんですよ。
皆様はシエナの「パリオ」をご存知ですか?毎年7月2日と8月15日に開かれる中世のお祭りで、ルネッサンススタイルの服装で行進や旗投げの競技があった後、最後には裸馬で10地区が絹で作られた旗を手に入れようと競い合うのです。「パリオ」とは絹で出来た旗の事(パッリウム)で、それを手に入れようと競い合う為、「パリオ」と呼ばれます。
シエナには17地区あり、毎年10地区が交代で「パリオ」に出ます。そしてシエナには約40頭ほどの馬がおり、昨日の午前中はその40頭ほどの馬の中から「パリオ」に出る10頭の馬が選抜された日なのです。

palio Siena

私と主人、そしてイタリア人の友達と一緒に朝7時に家を出て、シエナに着いたのが8時15分くらいでした。もう既に人がかなり出てきていました。
友達はこの馬の選別の日の事は良く知っており、さっさとカンポ広場に設けられた指定席の切符を買ってくれました。この日で、一番上の場所で約26ユーロを支払いましたから、下のほうの席(競争路のまん前)ではきっと50~80ユーロくらいはしたのでしょう。でも本当の「パリオ」の日には一番上の席でも1000ユーロはするのだそうで、勿論私達にはお金があってもそんな席は手に入りません。1度手にした人達は、もう何年も先までの席を予約してあるのだそうです。

palio Siena

又この友達のおかげで、私達の席は馬が出発する出発点の真上でしたので、馬が出発する時に下ろされる綱を張る所とか、舞台裏が見えて面白かったです。
そこに早めに座り、行き来する人達を観察してみました。テイーンエイジャーから大人まで、男女皆自分の地区の旗のスカーフを首や腰に巻き、もうすっかりお祭り気分です。と言うか、皆必死なのです。自分の生まれて育った地区の名誉の為です。その為に今日は皆集まって来ているのです。7月2日と8月15日の「パリオ」の日は勿論メーンイベントですが、しかしこの日に乗る馬を決める日も大変なイベントなのです。

さあ、10時になりました。競争路を綺麗に掃除しながら、そこにいる人々を外に掃き出します。もうこの頃にはカンポ広場の回りの指定席はびっしりで、広場の中もかなりの人が立っています。面白い事に、あまりの暑さに102mあるマンジャの塔で出来た陰の中に皆立っており、丁度イタリア地図のようでした。これがメインの「パリオ」の日となるとこの広場が身動きできないほどの人で埋まり、床なんてまったく見えなくなるのです。
さあ、いよいよ馬を選別する「審査員」達が入ってきました。1等高いところに陣取ります。

palio Siena

ドラムが「ドロロロロ…!」となったところで、「バーーーン!」とものすごい爆発音が響きました。私はびっくり!実はこれは馬が出てくるときのサインなのだそうで、いよいよ最初の6頭が出てきました。馬には番号が記されています。今日は馬選びなので騎手は白の上着に、シエナの紋の白と黒の帽子をかぶっていますが、これが「パリオ」の日にはそれぞれの地区の競争ですから、騎手はその地区の旗の模様の洋服と帽子をかぶって走ります。
前頭、綱の前に並んで、さあ出発となるのですが、それがなかなか難しい。
1頭が横の馬を押したり、または邪魔をしたりとなかなか綺麗に並びません。何度かやり直しをした後に、いよいよ出発です。本番の日とは違い、今日は馬の質を見てもらう為なので、余り必死に走りませんが、それでもかなりスピードがあります。「パッパカ、パッパカ、」と蹄の音を響かせて走ります。その走りを見ながら審査員が10頭を選ぶのです。

palio Siena

3回ほどカンポ広場の回りを走ったところで、ドラムが「ドロロロロ…!」となり、そして又あの「バーーーン!」と言う爆発音です。またもや私はびっくり!
今度は到着したサインでした。こうやって何度も「バーーーン!」を聞きながら、5回ほどで全部の馬の走り方を見たのです。何度か騎手が落馬する事もありました。何せ、馬には鞍がないので、曲がり角では滑りやすいのだそう。その為騎手には背が小さくて、太ももが大きく張っている人が選ばれるそうです。
ちなみに馬が走るカンポ広場の回りに敷かれた土は、毎年同じ土を使うのだそうです。この土はある倉庫に積んであり、「パリオ」があるたびにカンポ広場に運ばれるのです。こうやって1988年までは約500年もの間同じ土が使われたそうです。今の土は既に14年の歴史があるんですね。

終わった所で、皆それぞれ休憩に行きます。次は1時頃から、いよいよどの地区にどの馬があたるかの抽選が始まるのです。これが言えばこの日の大イベント。どの馬が自分たちの地区に当たるか、良い馬か、またはあまり良くない馬か、もうその日の抽選で「パリオ」の日の勝ち負けが大体分かってしまうのだから、興奮しないわけがありません。

palio Siena

私達もサンドイッチなどを食べながら時間待ちです。そしてまたもや少し早めに今度は別の席に座ります。太陽が高く上がり、暑さも増してきました。それでも皆そんな事は気にならず、その興奮に酔っているかのよう。
この席からは馬の抽選は余り良く見えませんでしたが、でもそれぞれの地区が与えられた馬を引き連れて引き上げるのが私達の座っている直ぐ前だったので、選ばれた馬そして興奮している人々を良く観察する事が出来ました。これも友達のおかげです。

イヤー、それにしても人々の興奮のしかたはちょっと普通ではありません。幾人もの若い男性は真っ赤な顔で興奮し、心臓発作でも起こさないかしら、と心配させられるほどです。良い馬が当たった地区はそれは大喜びで、拳骨を突き上げ、歌を歌いながら群れをなして馬の後に続きます。あまり良くない馬が当たった地区は、歌は歌っていますが、顔つきは悲しく、友達いわく、葬式に出ているみたいでした。

7月2日と8月15日にシエナへいかれる予定の方、この日はシエナは何もかも閉まっていますよ。そしてカンポ広場で「パリオ」を見ようかと考えていらっしゃる方、1度カンポ広場に入ると門が閉まり終わるまで出れません。その間約5時間。カンカンと陽が照る中、何度も担架で人が運び出されます。それに絶えられる自身のある方、どうぞエンジョイしてください。その自身のない方は、その日はシエナ行きは止められたほうが良いでしょう。

palio Siena