秋の気配漂うカルカソンヌ、そしてペルピニャン
カルカソンヌも秋の気配が濃くなってきました。
歩道や車道脇に立つプラタナスの木が今、紅葉真っ只中です。
プラタナスの木が紅葉すると、フランスがさらにフランスらしくなると思うのは、私だけでしょうか。
そして、秋というと味覚の秋。今は葡萄、洋梨、栗などが店頭に出ていますが、私が久しぶりに目にし、そして本当に久しぶりに買ったのがサツマイモです。
以前住んでいたスイスでは見た覚えはなく、トスカーナでもオーガニック店で2・3回見た程度で、買ったことはありません。
それが、今こちらのオーガニック店ではもちろん、スーパーマーケットでも普通にサツマイモが売られているのです。こちらではスイートポテトといいます。
私は 何十年ぶりかに買い、野菜ブイヨンで煮たり、薄く切ってフライパンで焼いてみましたが、そのお芋の甘さに、びっくりしました。
サツマイモって、こんなに甘いお芋だったのですね。調べてみると、体にも大変良い栄養分があるようで、我が家の食卓には、さっそく何度も登場しています。
さて、私たちがカルカソンヌに住み始めて1ヶ月が経ちました。
引越しで大変だった記憶も薄くなり、カルカソンヌの青い空を見ながらホッとしていたある日、忙しくしていた自分達へのご褒美にどこかのホテルに宿泊しようか、とジョン・クロードが提案してきました。
どこへ行こうかと考えた結果、私とジョン・クロードは、ペルピニャンの近くの海辺(カネ)に立つホテルへ行ってまいりました。スパが充実しており、レストランの食事も美味しくて有名だとか。
カルカソンヌから車で1時間半も走ればペルピニャンです。
そのすぐ横にはピレネー山脈が走り、その向こう側はもうスペイン。
到着したホテルは、部屋が南国風で、テラスから海が眺められて、いい感じでした。
目の前に広がるビーチは、トスカーナのものよりさらに大きく、どこまでも長く、長く、続いています。
フランスも大きな国ですが、スペインも大きいな、とつくづく思います。
さて、私たちがペルピニャン近くのホテルを選んだ理由は、もちろんカルカソンヌから近いということもありますが、実は、ペルピニャンは、私とジョン・クロードが約30年前にドイツのベルリンで出会い、それから数ヶ月後に初めて二人で一緒に生活を始めた町なのです。
二人ともお金がなく、彼のお姉さんに少し援助をお願いして、町の中心から少し離れたところにある住宅街に、小さなアパートを借りました。
借りたアパートには、以前もお話ししましたが、何も入っていません。
キッチンらしい部屋はあるものの、窓はなく、シンクさえなくて、水道栓だけが壁から突き出ていました。
私たちは、中古品のシンクやオーブン付きのガスコンロ、そしてテーブルなどの家具を買い、キッチングッズは、家の中がキッチングッズで埋まっていた、ジョン・クロードの義兄のお母さんから譲ってもらいました。
ベッドは買えないので、マットレスだけを買い、直接布団のように床に置いて使いました。ベッドシーツはジョン・クロードのお母さんからのプレゼントで、薄いピンク色でした。
昔ウエイターの資格を取っていたジョン・クロードは、駅にあるレストランで働き始め、まもなくお姉さんから借りていたお金は全て返却。
それからも、わずかな収入で生活をした私たちですが、物品的には何も必要なく、二人で一緒にいるだけで幸せでした。
そんなある日、私たちはジョン・クロードのご両親を昼食にご招待したことがあります。私は最低限のキッチン器具で手料理を作り、二人に喜んでもらいました。
信じられないことに、私は中古品のオーブンで自らシュークリームの皮を焼き、そこにアイスクリームを詰めて、熱いチョコレートソースをかけた、プロフィトロール・オ・ショコラをデザートとして振舞っています。
今でもシュークリームの皮を作るのは面倒で、なかなか作らないものですが、よくあんな古いオーブンで作ったものだと、自分でも驚きます。ご両親がいらっしゃるということで、きっと張り切ったのでしょう。
それからまもなくして、ジョン・クロードのお父さんが自分で使っていたというプジョー社製のモペットバイクを私たちに持ってきてくれました。
ちょうど夏の時期、私たちはそれに乗って、何度も海に繰り出したものです。
この時のことは、私の本「あなたの人生を生きる勇気」に書いていますが、とにかく、こういう思い出が一気に二人の頭に浮かび、30年ぶりにペルピニャンを訪れてみることにしたのです。
滞在先のホテルでは、スパを楽しみ、夜は運良く部屋のテラスからスーパームーンを見ることができ、そして、早朝3時半に起き出した私たちは、皆既月食まで観測してしまいました。
たった1泊の滞在でしたが、至れり尽せりのホテルでは、本当にゆっくりできました。
帰宅する前に、やはりペルピニャンは一度見ておきたいと、車で5分ほど走って街の中へ。
私たちが住んでいたのは、街からバスで15分くらいのところでしたが、街の中にあるオーガニックのお店や、コインランドリーへ行くたびに、繁華街でアイスクリームを食べるのが、私たちの唯一の贅沢でした。
私たちは街の中心地から少し離れた駐車場に車を止め、アイスクリームを食べた小さな川のほとりを目指して歩いて行きました。
歩きながら見る景色は、全く記憶にありません。
突然、目の前に大きくそびえる煉瓦色の城壁が現れました。
「えっ、こんな城壁、あったっけ?」「いや、ぜんぜん覚えてないよ」
こんなに立派な城壁を二人とも覚えていないとは、不思議で仕方がありません。
案内板を見ると、城壁は12世紀に建てられたと書かれていますから、私たちが住んでいた30年前には確かにあったはず。
城壁は、トスカーナのルッカにある城壁と良く似た形ですが、規模はルッカより大きいかもしれません。
門をくぐって入ってみると、中はレストランやカフェ、ブティック、そしてアパートでいっぱいでした。
その後、私たちが以前住んでいた場所にも行ってみたかったのですが、どこに住んでいたのか方角的に分からず、私たちは早々にペルピニャンを後にしました。
大きな街(都会です)のペルピニャンからカルカソンヌに戻ってみると、カルカソンヌが小さくて可愛い街なので、急に親しみが湧いてきました。
私たちはいいところに落ち着いたようです。
私たちがよく歩くウオーキングの道。川のほとりにあり、プラタナスの木が沢山立っています。
骨休めに行ったカネという町にあるホテルのテラスから見たビーチ。シーズンオフなので、ホテルもビーチも人が少ない。
早朝のビーチ。朝日が昇っています。
突然現れたペルピニャンの城壁。1年ほど住んでいたのに、二人の記憶には全くなし。
この川のほとりに、時々食べに行ったアイルクリーム店がありました。川沿いの道には沢山テラスが出ており、川のほとりもこんなに綺麗になっています。