古き良き友達
5月に入ってから昔の友達が続けて我が家を訪問してくれています。
最初の週は、スイスからの男友達でした。プロバンスに住む友達を訪ねた後、2日間を私たちと過ごすためにやってきてくれました。彼とはもう30年ほどの付き合いになります。
私たちがスイスに住んでいたときは、月に2・3回、ガールフレンドといっしょに我が家に日本食を食べに来ていた彼。
二人ともベジタリアンで、私たちもスイスに住んでいたときは魚も食べないベジタリアンでしたから、我が家ではもっぱら野菜だけの日本食で、それでも、豆腐や味噌を使ったソースなどを利用すると、結構豪華な日本食が作れました。魚なしの手巻き寿司などは、特に彼らに大好評でした。
ということで、彼がやってきた日は手巻き寿司、そして翌日は、私の作るトマトソースが大好きだったので、パスタのトマトソースかけを作っておもてなし。食後は美味しいチーズを食べながらワインです。
イタリアのトスカーナを出てから8ヶ月、こうして友達と食事をしながらおしゃべり、そして大笑いをするのは久しぶりなので、私もジョン・クロードも大いにエンジョイしました。
さて、ちょっと大変だったのが次の訪問客。
5月の後半、今度はアメリカから友達がやってきました。彼はフランス人、彼女はアメリカ人のカップルで、私たちがスイスに住んでいる時に仲良くしていた友達ですが、約20年前に彼らはアメリカに渡って行き、それから会うことはありませんでした。
数ヶ月前、久しぶりにメールが届き、私たちが南フランスに住んでいると連絡すると、彼等は5月の後半にリオンの家族を訪問するので、リオンへ行く前に私たちを訪問したい、という嬉しい返事を送ってくれました。
さて、こういう場合、私が一番先に考えるのは食事のことです。
お城の見学などで昼食は外で食べることになるとして、夕食は我が家でゆっくり食べながら過ぎ去った20年間の情報交換をしたいなと考えた私。
ただ、長い年月会っていない二人ですから、何が好きで、何を食べないのかわかりません。それで、何か食べられないものがあったら教えてくれないかとメールをしました。そして届いた返事が、びっくりだったのです。
彼等が食べるもの;サラダ、野菜、チーズ、卵、ミルク製品、缶入りイワシ、サーモン、ナッツ、豆腐、
彼等が食べないもの;炭水化物全て(米、パン、パスタ、キノア、小麦粉類、豆類全般)、ジャガイモ、人参とビーツ(砂糖を含むからだと)、砂糖、蜂蜜、アガヴェなどの甘味料全て、フルーツ全て(砂糖を含むから)、生姜、胡椒、唐辛子、カレー粉・・
・・・えっ?じゃあ、私が作れるものは・・・・?
手巻き寿司を食べてもらおうと思っていた私は、頭の中が一瞬真っ白になりました。これでは連れて行けるレストランも限ります。
幸いなことに、彼等はワインが大好き、チーズも大好きとのこと。
それで、彼等が到着した日の夕食はサラダとチーズと美味しいワインでおもてなしをしました。
翌日の昼食は、私たちがよく出かけていく「黒い山」の小さな村にあるティーサロンとサンドイッチのような小皿が食べられるお店に行きました。このお店の主人モニックは、美味しい料理を作ることに情熱を持っており、材料のほとんどはオーガニックのもので、野菜、地元の魚、肉など、その日に手に入る材料を使って料理を作ります。
その上、客の要望に応えて一品料理を作ってくれるのです。
例えば、ミルクが食べられない人にはミルク製品を使わない料理を作ってくれ、グルテンを控えている人にはグルテンなしの材料で作ります。
私たちは、友達がやってくる前にモニックのところに行き、友達の食べないリストを見せて、何か作ってくれないかとお願いしました。
砂糖や蜂蜜を食べない二人だから、デザートは作らなくていいからと言ったのですが、いや、何か作ってみるとモニックは俄然とやる気が湧いてきたようでした。
さて、そのお昼、4人でモニックのお店を訪ねてみると、モニックが嬉しそうな顔で迎えてくれました。何か、美味しいものを作ってくれたようです。
ワインを飲みながら待っていると、いよいよ料理が出てきました。
お皿には、サラダの盛り合わせとパンプキンの種、グリーンマンゴのスライス、椎茸入りのオムレツ、リゾット、そしてビートと豆腐とくるみのパテが載っていました。
マンゴはフルーツ、リゾットは米、ビートは野菜だけど砂糖を含む、と彼等の食べないもののリストに入っていたものですが、旅行中は少々目をつぶると彼らは言い、完食してくれました。
いや、実際にとても美味しかったのです。
ただ、デザートに出てきた赤いベリーのゼリーは全く甘くないので私の口には合わず、私とジョン・クロードはモニックがいつも作っているグルテンフリー、ミルクフリーのチョコレートケーキを食べて、ホッと一息つきました。
その日の夕食は、我が家でサーモンと野菜の包み焼きにゴマと白味噌のソースを添えて出しましたが、友達はあっという間に食べてくれました。
翌日、午前中はカルカソンヌのお城を見に行き、昼食は歩いてすぐのところにあるレストランへ行きました。
このレストランにはベジタリアンメニューがあり、私たちも食べて満足していたので、ここだと友達にも合うだろうと思ったのです。
4人テーブルに座り、それぞれメニューを見ていたら、友達の彼女の方が
「あっ、鴨料理がある。私、長い間、鴨を食べていないから鴨にしようかな」
と発言。えっ、肉、食べるの?とびっくりしていると、
「あっ、僕も鴨料理はずっと食べていないな。じゃぁ、僕も鴨料理にしよう」
と。なんと!!肉を食べるのなら、早くそう言ってよ!と心の中で叫んだ私です(ジョン・クロードもそう思ったそうです)
ということで、パンもパスタも米もジャガイモもスイーツも食べない二人が、これからの3週間の旅行をどう乗り越えるのかと心配した私ですが、肉料理とワインとチーズさえあれば大丈夫だったようです。
二人がこんなに厳しいダイエットを始めたのは約1年前のようで、彼女は甘いものの食べ過ぎで糖尿病になりかかり(かなり太っていたようです)、彼の方は前立腺癌の初期だと言われたからだそうです。
今が一番いい調子と言っていた二人(特に彼女)、炭水化物を全く摂取しないダイエットなので、特に彼が痩せていましたが、この調子でこれからもずっと元気でいて欲しいと思います。
4年前に建てた家にはゲストルームがあるから是非アメリカに来てね、アメリカまで出かけていく気がしなければ、ヨーロッパのどこかで落ち合って、4人一緒に観光してもいいね、なんて夜遅くまで話は弾みました。
そうですね、またいつの日か再会できるように、私たちも私たちの体に良いものを食べて、健康を維持していきたいと思います。
さぁ、次のお客さんは6月早々です。彼らも私たちがスイスにいた時からの友達で、私たちの歯医者さんでもありました。私たちがトスカーナに移住した時、彼らは既に家を建てて住んでおり、しばらく行き来をしていましたが、6・7年ほど前に彼らはスイスに帰って行きました。それでも、私たちがスイスへ行った時には再会しており、今回の再会は約2年ぶり?
彼らは私の作る日本食が大好きでしたから、今度こそは、手巻き寿司でお腹を満腹にしてもらおうと考えています。
黒い山という森を登っていくと、小さな村の端に見えてくるモニックのお店、「La Salon de Vauban」。冬は週末だけですが、5月からは水曜日から日曜日まで開いています。表に出ている赤いテーブルが開店のサイン。www.lesalondevauban.fr
左端がモニック。お店に入るといつも素敵な笑顔で迎えてくれます。
アメリカからやってきた友達。彼女は68歳、彼は73歳。見かけよりも中身はずいぶん若くて、彼女の方はしゃべりだすと止まらない
サラダに手をつけてしまった後なので、あまり綺麗な写真ではありませんが、とてもおいしかったです。
右がレッドベリーのゼリー固め。左がフロマージュブロン。砂糖を使っていないので、上の方にちょこっとブラウンシュガーが載っていますが、私はこれだけでは足らなくて、砂糖を追加しました。それでも甘みが足らなくて、この後チョコレートケーキを頼んでしまいました。
みんなで記念写真。後ろにある赤い缶にはいろんな種類のお茶が入っています。日本の煎茶もあります。そのほかに、オリーブオイルや地元のワイン、黒い山のウイスキー、蜂蜜でできた化粧品、チョコレートマスターが作る砂糖なしのチョコレート、リエットなどなど、いろんなものが並んでいて、見るだけでも楽しい。
古き良き友達。21年ぶりの再会で、それぞれ白髪が増えました。ところが、友達二人はとても元気で、アメリカでマラソンに目覚めたらしく、この日も、長い旅行で体が硬くなっちゃった、と言いながら、私とジョン・クロードの前を走って行ったり、戻ってきたり。息がきれることもなく、本当に元気でした。
手をつないで歩く友達カップル。フランスでは、若い人はもちろん、中年夫婦やお年寄りのご夫婦も、手をつないで歩く姿が自然です。